一生モテキとして過ごす

男性でも女性でも、「モテたい」と思うのは普通の感情だと思う。何もちやほやされたいとまでは考えていなくても、好感を持たれたいというのは当たり前のことだろう。「何だ、こいつ?」「何、この人?」などと、ぞんざいに扱われるのは誰でも嫌だからだ。

 

父ちゃんは大丈夫。ハゲてもデブっても、
アタシがずっとそばにおったるから。

 

モテる要素というのは顔立ち・背の高さ・スタイルなど具体的なものから、人当たりや会話力、雰囲気や慈愛などの人間性に関するものまで様々だと思う。従って、何の努力もなしにモテる人もいれば、結構努力しているにもかかわらずモテない人もいる。

 

 

自慢のようになってしまうが、話の筋道のため必要なことなので、少々我慢してお付き合い願いたい。

恵(私)は小学生の頃から40過ぎまで、ずっとある程度モテていた。だから「モテキ」を訊かれてもよく分からないぐらいである。

「断っておいて、いきなりそれかい? じゃあ、参考にならないじゃないか」とお叱りを受けるかもしれない。だが、そうではないのだ。なぜ、こんな反感を買うようなことを書いたかと言うと、恵はそれほどハンサムではないからだ。また、それほどスポーツ万能でもなければ勉強ができたわけでもなく、リーダーシップを発揮していたわけでもない。

「3人の芸能人に似ていると言われたら美形」と言われているが、恵は目が大きくもなく、似ていると言われたことのある有名人も、高校の時に五十嵐浩晃(歌手)、40歳前後の頃に大沢たかおと元阪神の赤星に元巨人の緒方ぐらい。

五十嵐浩晃は恐らく当時カーリーヘヤ―だったことが大きいだけで全く似ていないと思うし、恵自身は他の誰とも似ていないと思っている。また、嫁も似ていないと言う。それに、もし似ていたとしても、その似ている対象がちょっと微妙ではない?(みなさんごめんなさい)

「若い頃は長瀬智也で、年を取ってからは阿部寛」などならハンサムの可能性が高いが、恵の場合、俳優はたった1人だけでしかも大沢たかおである。こんな言い方をするとファンに殺されるが、大沢さんは美形でも、それに似ている人が美形である確率は、と考えてみてほしい。そういう意味で言っているのだ。とにかく、恵が似ていると言われる人たちの共通項は「目が細い」ことぐらいだ。



また、恵は体型やファッションだけでなく、人当たりや雰囲気まで、その年代ごとに全く違っていた。体型の変化はウエイトトレーニングによるところが大きいのだが、15歳から20歳までは177cm55kg前後のガリガリで、その一年後の21歳から35歳までは70kg前後、40歳の頃には80kgを超えていた。

服装も地味で質素な時もあったし、逆に非常に派手な時もあった。性格…これは相手から見たもので、恵自身がそれほど変わったのかどうかは分からないが、たとえば、中学生になってから小学校時代同級生だった女の子に「恐くて話しかけられなくなった」と言われ、大学に入ってから高校の時の友達に合うと、呆気に取られた様子で「おまえ、、、そんなに喋る奴だったか?」と訊かれた。その後も数年間会っていなかった友人には、常に同じような反応をされてきたので、かなり変化が見られるということだと思う。

ファッションも、カーリーヘヤ―に白いスーツに赤いネクタイにサングラスや、黒の革上下という、自覚はなかったがもろ松田優作かぶれでミナミ(難波)を歩いていた高校時代と、大学で空手を始めてから「男のカッコ良さは外見ではない」と思い、グレーのビジネススーツに変え、短髪にしていた時代ではほとんど別人のように違う。

言いたいことは、これだけ常に変化し続けていても、恵はモテ続けていたということである。そして、なぜこんなことを書いているかと言うと、ハンサムでなく、それほど性格が良いわけでもない恵がモテていた理由を考えていて気付いたことがあったからである。それは、

「自覚のないままに、常にモテたいと思い、モテるための努力をしていたから」

ということだ。

「そんなもの、みんなしてる」

と言われるかもしれない。そうだと思う。が、恵は女好きなので、しかも、元々は女性赤面症だったぐらいシャイなので、かなり気合を入れて努力していたのだと思う。




それがどれだけへんてこりんな努力だったかは「隣同士」に書いたのでそちらを読んでみてほしいと思うが、モテる要素が多岐にわたるように、モテるための努力も様々あると思う。

それこそ「モテる」で検索すれば、いっぱい出てくる。その中でも多いのは、「精神性を磨く」「趣味を増やし、意見を増やす」というものだが、この辺に関しては恵はよく分からない。元々、音楽・ドラマ・映画・スポーツ・小説や漫画などが好きでよく知ってはいた。が、これらをよく知っていることとモテていたこととはそれほど関係ないと思う。なぜなら、挨拶程度の相手にもモテていたし、逆に、その辺に詳しい友人でモテない人間もいたから。

どちらかというと、それらを多く取り入れていると「深みが増す」というぐらいだろうか。まあ、確かにいざ会話ということになった時に話題には困らないので、これは第二段階の時に役立つ要素とは言えると思う。

ただ、一番大事なのは「第一印象」である。ここでダメだと第二段階はないからだ。先の友人はここを突破できないためモテなかった。そして、彼は当時20代で完全に諦めていて、何の努力もしていなかったのだ。筋力もなく手足は細いのに腹は出ていて、女性に会うのにも無精ひげを剃らないぐらいだった。

恵は、自分と彼との決定的な違いがここだと思うのだ。




彼は「外見で人を判断する女なんて」と言っていたが、恵は「そうではない」と、彼に女性を紹介する時、ひげを剃らせた。待ち合わせに来た時剃っていなかったので、コンビニで髭剃りを買わせてトイレで剃らせたのだ。

容姿がどうの、という以前に、大概の人間は「汚いもの」が嫌いである。また、日本人の場合、「身だしなみができない」ということも大いにマイナスで、見合いのように初めて会う席に無精ひげで行くと人間性を疑われかねない。今でこそ、そういうファッションもあるが当時にはなかったから。下手をすれば「バカにしてるの?」と思われる可能性すらある。相手に失礼である。

ちなみに、彼はその彼女から付き合いたいという申し出を受けたが、彼の方から断ったことを付け加えておく。まあ、その辺は相性の問題なので仕方がない。相手は可愛らしく見た目もなかなかの子だったのだけどね。

もし「精神性を磨く」ことが有効だというなら、恵はこの辺りのことかもしれないと思う。ただ、そんなたいそうなことではない。「相手を思いやる」とまで考えなくても「相手に好かれたい」「嫌われたくない」と思っているだけで、自ずとする程度の行動で良いのではないかと思う。

「相手に好かれたい。嫌われたくない」という想いは、相手からすると「自分が好意を持たれている」という形で伝わるからだ。どうでも良い相手に、そんな風には対応しないからである。逆に言うと、無精ひげで行くと、実際にはそうではなくても、「好かれたいとは思わない。嫌われても良い」となり、相手には「どうでも良い相手だと思われている」と伝わるのだ。




恵の努力はこの一点に尽きると言っても良いと思う。中学の時に恵の「前髪ファンクラブ」があったことは「動物とAGA、そして輪廻転生」にもちょこっと書いたが、恵は中一の終わり頃に急に色気づき始め、それまで毎日頻繁に行っていたスカートめくりやスカート潜り(こそっとスカートの下から入る)ができなくなった。

なぜそうなったかというと、バレンタインデーにチョコをくれたクラスメートの女子にときめいてしまったからだ。ちょうどそういう時期だったのだろうが、とにかく、それ以後、恵は女性とうまく話せなくなってしまった。

それからというもの髪にこだわり始め、だが、襟足があまり長くなると担任に刈られてしまうので、前髪だけを伸ばし始めた。女子とはほとんど話せなくなっていたが、それが逆にニヒルと取られたようで、「前髪のイカしたニヒルな子」と思われたのか前髪ファンクラブができる流れとなった。

つまり女好きの恵は、この頃から「モテたい」と思い、無自覚的に様々な努力を続けてきたのである。

中二の時の文化祭である1人の先輩が弾き語りをしたのを見て「カッコイイ」と思い、祖母ちゃんにギターを買ってもらって弾くようになった。自分自身、中三の文化祭に出るために。ここでも自覚なしに「カッコよくなりたい」「モテたい」という想いはあったのだと思う。

そして、実際に中三の時に文化祭で弾き語りをした。寸前で怖くなって友人二人を引き込んでのものであったが。

冒頭に「モテキが分からない」と書いたが、人数だけで言うと間違いなくこの中三の時である。知らない後輩からも電話はかかるし、一度も同じクラスになったことがない女子が毎休み時間にクラスの前に立っていたりした。卒業式の日は、学生服の前ボタンはおろか、袖のボタンも校章・組章・帽子のエンブレムや詰襟のカラー(プラスチックの板)まで全てなくなった。

小学時代からスポーツ万能で男っぽく、常に人気者だった友人が言うには恵が「あの頃は学校一モテていた」らしい。ちなみに、一緒に文化祭で演奏した友人二人は、それまでと同じく全くモテなかったようである。恐らく恵ほど「モテたい」という想いが強くなかったのだと思う。




斜め読みした方には恐らく単なる自慢と取られるだろうが、本当に断じてそうではない。これらは過去のことである。現在のことではない。あるページで書いたが恵は今のことにしかあまり興味がないのだ。

何でも「差はほんの紙一重」と言うが、それを伝えたいだけなのである。

大学時代の友人に「おまえがモテる理由がようやく分かった」と言われたことがある。この発言自体で恵がハンサムではないことが分かると思う。いかにもモテそうな人間に言う言葉ではないからだ。

彼が言うには女性がいる時といない時でのON・OFFがかなり明確なのだそうだ。恵に自覚はないのだが、顔つきから行動から全てが違うそうだ。

ある日、友人宅にいる時、食当たりなのかどうかは分からないが、恵は急に下痢に襲われた。それからは5分置きぐらいにトイレに駆け込むという状態だったのだが、そこへ運悪く1人の友人が自分の彼女を連れてやってきたのだ。

デートに行く前に立ち寄ったらしかったが、恵は彼らがいた1時間ほどの間は普通に会話に参加し、彼らが出て行ってから一目散にトイレに駆け込んだ。それを見ていた先の友人は、「やっぱりおまえの気合い(モテたいという想い)は違う」と言った。

確かに、恵は相手が友人の嫁さんであっても恥ずかしい想いはしたくないし、できれば好感を持たれたいと思っていると思う。いや、手を出すことは有り得ない。そういうことではなく、恐らく本能的に女好きの人間の場合、そうなるのだと思う。

そして、モテたいと思っている人に言いたいのは、「もっとその想いを強く持って」ということだけである。

人は好き嫌いを0.3秒で判断すると言われているので、恵の場合、女性がいたらどんな時でも全く気を抜けない。こっちがだらけた態度を取れば相手は「自分のことを気にしていない」と取るだろうし、気を張っていれば(好かれたいと思っていれば)、相手は好感を持たれていると感じる。そして、

誰でも好感を持ってくれている人間を悪く感じることは少なくないですか?

 

 

恵の場合、心底女好きなのだろうと思う。全くその辺のことを自覚なくやっているので。中二・中三の担任は同じ先生だったのだが、この先生から恵はいつも「ヤツシ」と呼ばれていた。古い言葉なのか方言なのかは分からないが、意味を訊くと「いいカッコしい」のことらしい。

ほとんど口も利かない大人しい生徒を捕まえて何を言っているのかと当時は思っていたが、今考えると、先生は正しかったのだと思う。周りを見ても、そこまでの女好きもいなかったし、またモテたいと強く思っている人間もいなかったように思う。

だから、恵からのモテたい人へのアドバイスはそれだけ。「強くそう思って」ということだけ。強くそう思っているだけで身だしなみにも力が入るだろうし、対応も違ってくると思う。

恵は高校の時、よくミナミにナンパに出掛けていた。もう既に女性赤面症は治っていて彼女もいたが、まだ恥ずかしいという想いが強かったからか、女慣れしたかったためか、単なる女好きだったからかは明確ではないが、恐らくリハビリのための努力を続けていたのだと思う。

彼女公認で、実際、お茶する程度で帰っていたのだが、勝率は初めのうちは100%だった。携帯のなかった当時、手帳に女性の電話番号が見る見るうちに増えて行った。

途中からモテない友人に声をかけさせるようになって、それから確率は落ちた。友人はその当時が一番シャイな時期で、声を掛けて「ええ……」と相手がためらっているとすぐ「ああ、ごめん。ええわ」と諦めるのだ。二つ返事で「はい」というのは少ないのに。全く女性心理を理解していない。そんなもん、押されないと応えにくいに決まっているではないか。。。

そういえば、このナンパの時、相手の女の子たちによく似ていると言われた人物?がいる。ただ、それは芸能人などではなく、「同じクラスの岩崎君」などである。「自分の知り合いによく似ている」と何度も言われたのだ。

つまり恵の顔は「どこにでもよくある顔」ということなのだろう。また、恵は「岩崎君たち」がその彼女たちに対して、密かに恋心を抱いていたのではないかと思う。だから似ているように見えたのではないかと今は思う。




よくあるアドバイスに「こういう行動を取る」だとか「この辺の話題を」だとか「相手を思いやって」などというものがあるが、恵はそれを否定はしないが、そういう「取って付けた」ような言動は大概女性にばれると思うし、何よりぎこちなくなりやすいと思う。

「だけど、会話や対応に困っているのだから」

うん。そういう人にはそういうアドバイスが必要なのかもしれない。緊急の場合は特に。ただ、思い出してほしい。恵は女性赤面症だったのだ。わざと話しかけて「わ~い、やっぱり赤くなった」などと女子にからかわれていたのだ。それでも、そういうやり方は取らずにモテてきたことを思い出してほしい。

恵はそれらのアドバイスにある全ての言動や努力は、恵がそうだったように「異性から好かれたい」という想いさえあれば「自然に」できるものだと思う。そして、こっちの方が楽でうまく行くように感じている。人間、不自然なものには当然、違和感が伴うと思うので。

ただ、どうしてもうまく話ができなくても「卑屈」な態度を取るのは好ましくないように思う。それはカッコ良くないので。カッコ良くない態度を見せるということは「相手をどうとも思っていない」ことになるから。逆を返せば、カッコよく見せようとすることは「相手を意識している」ことだから。

恵は中学の時の赤面症の間は女子とうまく会話ができなかったが、だけどカッコ悪いのは嫌なので「無口」を装っていた。あまりに恥ずかしい時は怒ったりしてでもごまかしていた。今考えると当然ばれていたと思うが。

現代は時代が違うので、この方法はあまりお勧めできないが、ただ、この恵の方法もやはり相手には「自分を意識している」と取られ、悪く取られることはあまりなかったように思う。全ては「カッコ良くありたい」「好かれたい」という想いから出た行動なので。




ただ、それでも、一番肝心な時に恵はこれで失敗しているのでやはりお勧めはしない。中三の時に学校一の人気者でアイドルのような女子に告白するつもりが恥ずかしさに無意味に切れてしまい、終わってしまったことがあるからだ。

彼女は中二の時の同級生だったのだが、彼女が恵のことを好きなことは人伝てに聞いて知ってはいた。が、そうはいっても赤面症の恵にはなかなか告白などできない。だが、スポーツ万能で背も高いイケメンから、彼女が既に3度も告白されていることを知ってからはかなり焦り始めた。彼も中二の時の同級生だったのだ。

しかし、彼女は、小学校の頃からずっとモテモテのその彼の告白を3度とも断っていた。一度目は今付き合う気はない。二度目は好きな人がいる。三度目はキレ気味に、あなたが好きではないから。と。

これは修学旅行の時に、そのイケメンと仲の良い友達から聞いた話で、一瞬、恵はうれしくなったが、その後の彼の言葉を聞いてまた焦り始めた。

「あいつ、もう一回この修学旅行中に告白するみたいやぞ」

恵はそれを聞いて何とかしなければと思った。だが、その術が分からなかった。ただ、観光をしている間、できる限りクラスの違う彼女の近くをうろついていて、微笑みかけられては、はにかんで俯いていただけである。

だが、そんな恵にもチャンスが訪れた。たった一度だけだったが。今思えば、もしかしたら彼女が作り出してくれたチャンスだったのかもしれない。

旅行最終日の前夜だったと思う。家族への土産物を買いに旅館の売店に一人で行くと、運よくそこに彼女が一人で来た。同じ学校の人間は他には誰もいなかった。そしてシャイな恵のために、いつもの如く先に向こうから声を掛けてくれた。

「何、捜してるん?」

「え、ああ、、、」

このチャンスを逃したら、終わりだと思った。ので、

「姉貴の土産探してるんやけど、男の俺ではよく分かれへんねん」

と何とか答えた。ある言葉を期待して。

「そう。じゃあ、一緒に探してあげるわ」

予想通りに事が運んだ。

ただ、ここで邪魔が入った。その邪魔者はいつ頃合流したのだったかよく思い出せない。その邪魔者とは、彼女がずっと一緒にいる友達のことである。途中から2人に割り込んできたのだ。もしかしたら援護のつもりだったのかもしれないが、この後、この彼女がとんでもない邪魔をするのだ。

姉の土産物を彼女が見つけてくれた時、しきりにその品物を「かわいい」と言っていたので、後で彼女にもプレゼントしようと思っていた。ただ、なかなか言い出せず、そのタイミングを見計らっていた。

レジを済ませている間もしきりに言っているので、お礼にという名目で「じゃあ、買ったるわ」と言おうと振り返った時、

「私にも買って」

という声がした。

が、その声は彼女のものではなかった。邪魔者の方の声だったのだ。

一瞬にして彼女の顔が凍り付いた。彼女とは苗字が同じ行だったため、中二の時は理科の実験など、班分けする時はいつも一緒だったから恵のシャイさはよく知っている。

「買って……」

引きつりながらも笑顔を作り、彼女もせがみ始めたが、もう遅かった。邪魔者の声に我に返った恵は恥ずかしさに勝てず、

「自分で買えや」

と怒ったように捨て台詞を吐き、その場を後にした。

アホやろ。。。ほんまに。。。

今となっては、邪魔者の言葉も、彼女に対する援護だったのかもしれないと思う。その子からしたら彼女が言い出せないだろうから、先に言ってそれに追随できるようにという配慮だったのかもしれない。

ただ、それまで二人でようやくいい感じになり始めていただけに。ほっといてくれさえすれば、どちらからでも言い出せる流れだっただけに。。。まあ、いずれにせよ、全て恵が悪いのだ。恵の驚異的なまでのシャイさが。だが、このシャイさも、好かれたい、嫌われたくないという想いの裏返しだったのだろうと今は思う。それが悪い形で出ていたということである。

後に先のイケメンの仲良しから聞いたことだが、入れ違いのようにその日彼女はイケメンから呼び出しを受け、非常に高価なプレゼントと共に告白を受けたそうだ。

「これで最後だ」

それで彼女はOKしたそうだ。

 

 

「事実は小説より奇なり」と言うが、本当にそうである。恵は小説を書いていたことがあるが、これは創作ではなく事実なのだから。

その後、恵は憂鬱な日々を過ごしていた。ひたすらギターというか歌に救いを求め、没頭していた。そして、やがて文化祭に出てブレイクするのだが、今から思うと「憂いを秘めた感じ」というのもモテた原因の一つだったのだと思う。

が、本人はその当時「モテても意味ないやないか。好きな女とうまくいけへんねやったら……」と思っていた。そして、そのことがあったために、もう二度と同じ失敗はしたくないと思い、「隣同士」で書いたような乱暴なやり方でリハビリを始めたのだ。

ちなみに、彼女の友達のことを「邪魔者」と書いてはいるが、便宜上そう書いているだけで、当時から全く恨みは抱いていない。彼女は何も悪くないからだ。全ては恵のせいだ。そして、その邪魔者さんは恵と同じ高校に来た。元々恵と学力レベルが近かったのだ。

目当てだった彼女はというと、イケメンと付き合い始めたため、そこから猛勉強して担任の制止も振り切り、中三の半ばでの彼女の成績からは3段階ほど上の高校を受験して見事合格した。イケメンが学年一の秀才だったため、学区で2番目の高校(1番目でも通るようだったが、遠いために行く気はなかったそうだ)に行くことが決まっていたからだ。

後で本人から聞いたことだが、本当は彼女は恵と同じ学校を受けるつもりだったらしい。本人曰く、邪魔者さんが行くということと、本当に良い学校だと思うし、好みだから、ということだった。イケメンともう付き合っている彼女は当然、恵のことは口にしなかったのだが。

実際、彼女の学力から言えば、恵の高校へ行くのは少しおかしい。誰もが滑り止めの私立に合格している場合、公立は少し無理をして上を受けるか、ちょうど良いところを選択する。彼女からすれば恵の高校は2つほど下になるのだ。

恵は1つ上でも可能だと言われたが、その高校を早くから選んでいた。理由は2つ違いの姉が通っていたため文化祭に行ったことがあり、フォークソング部のライブを見て感動したからだ。是非、恵も入りたいと思ったのだ。そして、実際に入学してすぐ入部した。

 

 

彼女といつこういう話をしたのかと言うと、情けないのでこれは書きたくないのだが、事実なので簡単に書いておく。中学卒業の日に、酔った勢いで彼女に電話したのだ。ちなみに恵は10歳ぐらいからビールを飲み始め、その頃には寝付くためによく日本酒を飲んでいた。ただ、その日は昼から独りで飲んでいたのだが。

自己弁護しておくと、確かに少し早めだが、当時は「男は酒ぐらい飲めないと」と言われていた時代で、恵の場合、酒は親公認だった。ちなみに秀才で真面目なイケメン君も中三の頃には酒を飲んでいたらしく、人伝てに「恵と飲んでみたい」と言っていると聞いたことがある。実際にそれが実現したのは、その十年後、20代半ばの同窓会の時で、とうに二人とも同じ女性に振られた後だったが。。。恵の場合は振られたのか? まあ、そう言うことになると思う。

彼女に電話した理由は、酔った勢いでけじめを付けたかったからだ。完全にアウトと分かっている時に、過去の話として「告白」したのだ。斉藤和義の歌のように「ほんと、好きだったんだぜぇ」と。それと「あの時」の弁解。カッコ悪いねえ。。。当時の恵にはそれで精いっぱいだったのだ。

通常の会話と違って、それを切り出した時の彼女の反応は何とも言えないものだった。一瞬静寂があり、それから消え入れそうな声で「え~っ、うそ~っ」と、何度も繰り返していた。が、恵にはそのか細い声に怒りが含まれていることを感じていた。全く、声色はそうではなかったのだが、なぜか分かるのだ。

まあ、当たり前だわな。あまりにも身勝手な行為だ。今でも彼女には申し訳ないことをしたと思っている。それ以後も街で顔を合わすたびに微笑んでくれる愛想の良い彼女なだけに、本当にうざかっただろうと思う。

ただ、恵自身にとっては、この情けない電話のこともあって、より強く「二度とこんなふうになるのは嫌だ」と思うようになったので、本当に勝手だが、恵にとっては意義深い電話ではあったと思う。

ここまで書いてきて、何か意味不明になってきたので、話を元に戻す。




ちなみに恵は40歳を超えてからも、20代30代の女性からよく求愛されていた。中には10代もいたし、「その行為のみで良いから」と言われたことも何度もあった。

また、独身主義の女性が生涯のパートナーにしたがったり、60前後の同僚や逆に大学を出たばかりの同僚が好意を持ってくれていることを友人の女性から聞いたりした。女子会では年齢に関係なくほとんどそういう話なのだそうだ。同僚の女性のほぼ全員の好みが恵だったらしい。その友人の女性も含めて。

高校ぐらいから40歳前後まで話が飛んでいるが、その間はモテなかったというわけでは当然ない。全部を書く必要はないから割愛しただけで、ずっと同じような感じだった。

大学一年の時に小学校の同窓会があり、その時は男性経験なしの女の子(結構かわいい子で少し心が動いた。まだ嫁と知り合う前)に「エッチだけで良いから」と酔った勢いで絡まれ続け、胸を無理やり触らされた。

20代半ばの頃にあった中学の同窓会では、やはり酔った勢いで絡みつく子がいて、帰ってシャツを脱ぐと襟元にべったりキスマークが付けてあった。20代当時の同僚に同い年の未経験の子がいて、その子にも「初体験だけで良いから」と迫られた。

30代の頃、インドに1人旅に行くと、向こうで知り合った20代の女性二人が、「トイレ貸して」と夜に部屋に飛び込んで来た。自分たちの宿がすぐそばにあるのに。だいたい、女性のいる所なら常にこんな感じだった。

 

ビアネージュ(バスト)

 

ここで断っておくと、恵はその全てをお断りしている。理由は、恵には嫁がいるからで、嫁が大好きだからである。ちょっとやそっとの相手ではいくら若くても興味が湧かないし、また、若い頃(結婚前)にいろいろあったので、もう懲りているというのもあった。

つまり、結婚前のここには書いていないことはいろいろあったのだ。だが、ポリシーなのか、これもリハビリなのか分からないが、向こうから来たものは全てお断りして、女性とは恵から迫って関わっていた。

今気付いたが、面白いのは、結婚後もモテていたということは、モテたいという気持ちはあったようだということである。恐らくこれは生まれつきで、一生変わらないのかもしれない。




長くなったので、まとめを書くと、

〇 モテるためのアドバイスは様々だが、精神的なものは「これが正解」というものはないように思う。

〇 本で読んだ知識などに頼ると不自然で女性にはすぐばれるし、皆、性格や特徴が違うので「こう」と一概には言えない。

〇 それよりは「モテたい」「好かれたい」という想いを増幅させる方が早道。

〇 「好かれたい」と思うと自然と対応がそのようになり、「好意を持っている」と相手に伝えることになる。相手は悪い気はしない。

〇 また、そう思っていれば、自分も身だしなみなど努力するようになる。

〇 「素」の感じであるほど相手と通じやすくなる。

たった、これだけである。これだけの話に説得力を持たせるため、長々と書いてきたのだなあ、、、まとめる能力の無さったら。。。

ただ、精神的なものと比べ、身だしなみや体型づくりに関しては、「だいたい正解」があるように感じている。既に書いたが、汚い風体が好きな人は男女ともあまりいないだろうし、いわゆるデブ専と呼ばれる方々以外は、だいたいすっきりした体型を好むものだと思う。

恵は常に好かれたかったからか、ずっとそういう努力は続けてきた。だからいまだにウエイトトレーニングは続けているし、様々なサプリも採っている。

男性の場合でスタイルを良くしたい方は、「男性のウエイトトレーニング法・導入編」以降、7回にわたって書いているのでそちらを読んでみてほしい。

また、女性の場合は「嫁の胸を大きくする試み」辺りから読んでみてもらいたいが、男女とも、身体づくりにはサプリメントが必要不可欠で、それに関しても数多く書いているので「目次」へ行って気になるものを読んでみてもらえると嬉しい。

恵が取り上げていることは身体づくりだけではなく、身だしなみに関することも多い。「体臭」「口臭」「いちご鼻」「イボ」「まついく」「脱毛」「敏感肌」「毛染め」「シミ」「シワ」「たるみ」「ハリ艶」など、挙げればきりがない。

また、話すことが苦手な人に、「恵のように街でナンパして訓練しろ」とは言えない。特に現代はそういうのは危ないと思う。双方にとって。

だが、やはり「話し慣れ」はしたに越したことがないので、その場合は、「お見合いパーティー」などに行くと良いと思う。

まあ、とにかく「目次」で気になったものを読んでもらえれば、と思う。




最後になったが、最近のことを書いておく。

アン(詳しくは「引きこもり犬・アン」をお読みください)が来てから、恵としてはかなりモテたいという想いが薄れていたように思う。

元々大の動物好きで、動物といる時だけは女性のことを忘れるぐらいである。アンが来てからずっと恵は彼女に夢中で、またアンも、これを書いている今も恵の後ろで眠っているが、常に恵にべったりなので、満足してしまっていた。

つまり、好きな相手にモテていたからである。

だが、そのせいなのか、肝心の嫁が恵を時々貶すようになった。前はそんなことは全くなかったのに。もしかしたら、いや、完全に嫉妬しているのだ。時々本気で嫉妬から嫌味を言われる。彼女自身、アンをこの上なく愛しているのにもかかわらず。

これではいけないと思い、最近ようやく「復活」して、怠けていたウエイトトレーニングも再開し、いちご鼻解消など、身だしなみにも力を入れ始めた。

なぜなら、恵は一生モテ続けたいからである。結婚以後のこの意味は「嫁にずっと素敵だと思われ続ける」ということである。

後、もう一つだけ、おこがましくもアドバイス的なことを付け加えるなら、「愛されたいなら、先に愛せ」という当たり前のことを挙げたいと思う。

恵はどこの犬にでもよく好かれるが、それは恵が先にその犬のことを愛しているからだと思う。「なぜ犬ならOKなの?」でも書いているように、恵は無類の犬好きで、それがどこのどんな犬であれ、犬というだけで「あらかじめ」可愛いと思っているのだ。

それと同じように、女好きの恵は、全ての女性を女性というだけで「あらかじめ」愛しているのかもしれない。

 

 

 

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