だからぁ、父ちゃんサッカー観て騒いだら
アタシは父ちゃん噛みたくなるっちゅうねん!
これはウクライナ戦前にアップした「中島翔哉に期待する」の続きである。どちらから読むかなどは読者にお任せするが、ただ、こちらから読んだ場合は、前回と重複する部分は省略するので、少し説明不足と感じるかもしれないことだけはご了承願いたい。
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他の選手の人選のための試合でもある。それは分かっている。だからずっと我慢していたが、後半得点されてもまだ中島を出さないことに恵はイライラしていた。ここで流れを完全に変えられる選手は招集されている中では彼だけだと思ったし、何より「彼のメンバー入りはもう決まっているのか?」という問題もあったからだ。
恵としては、中島をW杯に連れて行かないという選択肢は有り得ない。彼をよく知る手倉森コーチがいるので大丈夫かとも思うが、果たして現監督がどれだけコーチの意見を取り入れる人なのかが分からないから心配だ。
後半もう残り11分、結果ロスタイム合わせて16分というところで出場となった。
「遅すぎる……」
恵はそう思った。他の選手の人選もあるだろうが……ほんまに中島は決定してるんやろな? けど、たった一回のマリ戦途中出場だけで中島のメンバー入りを決めるぐらいなら、何で今まで使わなかった? とにかく現監督の起用の仕方がイマイチよく分からないので余計不安だ。
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また、唖然としたのは解説の1人の発言だった。
「中島、プレスかけに行った方が良いですね」
ほんまか? と耳を疑った。自身もA代表でプレーし、今は解説としてずっとサッカーを見続けているはずなのに、本当に中島がやろうとしていることを理解できないのか、と。
中島は手を抜く選手でもなければ労力を惜しむ選手でもない。また、プレスの必要性を知らない選手でもない。ただ、後半34分で起用された彼は、自分に求められていることをしようとしていただけだ。
確かに、途中交代のフレッシュな選手が前線からプレスをかけるというのはセオリーだ。それ自体は間違ってはいない。ただ、残り時間が少なく1点ビハインドで求められることとは何だろう? それはただ一つ、得点だ。もしくはそれに繋がるチャンスメイクである。
恵は残り少ない時間で、中島が必死でその状況を生み出そうとしているのがすぐに分かった。プレスをかけることによって当然パスミスにつながることもあり、それがチャンスにつながることもあるが、彼はもっと直接的な方法を模索していたのだと思う。
中島は、一見、ダラダラ歩いているように見えるが、実際には周りの状況、味方や敵の位置をキョロキョロずっと確認していた。また、今野のディフェンスの仕方と同じく、あれは「気配を消す」という意味合いも持つ、と恵は考えている。
今野は背が高くないディフェンダーなので、初めからマークしている相手に常にくっ付いていると、パスを出す側も出される側も今野に気付いているので対応されて、結局高さで負けてしまう。だから、少し離れて相手選手たちに注目させないようにしておいて、マークの選手に不用意なパスが出た時、詰めてボールを奪うのがうまかった。
中島も背が低い。それを活かす方法は「相手を翻弄すること」だ。その一つはドリブルの仕方であり、もう一つは「死んだフリ」だ。背が低い選手は小回りが利くのでドリブルでの切り返しなどはしやすいし早い。また、背の高い選手たちの中では皆の視線は高いところにあるので低い選手は視界から消えやすい。彼は自分の特徴をよく理解していて、うまく活かしているのだ。
尚且つ、疲れてきている後半で、皆が動いている時に歩いている選手は見落とされがちである。後年のピルロなどはこれをうまく活かしていたのか、信じられないぐらい歩き続けていた。走っているのを見ないぐらい。それでも常にフリーでボールを受けられるのだ。それは恐らく「歩く」ことによって、その状況を生み出していたのだと思う。
とにかく、解説がそれを理解できないのかと恵が驚いていると、終了間際、その解説が理解できるであろうプレーを中島がやってのけた。キーパーがディフェンダーに出した不用意なパスをインターセプトして見せたのだ。あれをもし、あの場所で「やる気見せたる!」と張り切っている素振りをしていたら、絶対に出されなかったパスだ。
だから、不安なのだ。あのF田でも分からんのなら……と思うと。人選をどういう手段でやっているのかよく分からない現監督では。。。
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昔、森本が「歩く」ということをよく指摘されていた。森本もそういった「緩急」のためにやっていたことだと思うが、結構、賛否両論だった。結局、ある監督は彼をW杯に連れて行きながら一度も使わなかった。
だが、中島は必要だと思ったらプレスもかけるし、めちゃめちゃ走り回ることもあるので、森本よりは分かりやすいと思うのだが、それでもダメなのか?
歩くこともあるため、必要な時のトップスピードは高いし、また90分間パフォーマンスを落とすこともなくプレーができる選手なのだ。それは五輪やその予選を見ていたら分かることだと思うのだが、、、まさか見ていないなどということはないだろうし。
恵の好きなオシムは歩く選手が基本的に嫌いだが、それでも中島のプレーは理解でき、恐らく彼なら有効に中島を使ったと思う。
オシムは選手の利点を活かすのがうまかった。過去の監督ではオシムだけが柏木陽介を有効にまた数多く起用していたと思う。オシムは柏木に定位置だけでプレーしろとは言わず、好きなように走らせていた。そのため、ボールがある所にはどこでも柏木がいるというぐらい彼は走り回っていた。左サイドの前線でボールに触ったすぐ後に、今度は右サイドのバックポジションでボールを奪いに行っているなど、あまり見ない光景をよく目にした。
また、羽生という選手もオシムだけはうまく使っていた。恵は羽生のことを「忍者」と呼んでいたのだが、その理由は誰も気付かない間にコソっと敵の背後にいるからだ。彼に注目して見ていると、本当に気配を消してプレーヤーたちから独り離れて、カニ歩きでコソコソっと移動しているのだ。
ああいう選手たちをうまく使えたオシムなら、遅くとも五輪後すぐに中島を使い始めていたと思うのだが、どうだろう? 前回のW杯の頃だったと思うが、オシムは「今日本代表に必要なのは羽生のような選手」とも言っていたし。。。
何か、「オシム推し」に話が変わってきたのでそろそろ締めるが、日本サッカーの未来を見据えて、中島のような選手にもっと活躍する機会を与えてほしいと思う。それがW杯で実際に結果につながるかどうかは分からないが、少なくとも日本のサッカーに変化が起こるのではないか、と恵は期待しているのだ。
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