幽霊を見続けて気がふれた友人達(興味を持つと見えるようになってしまう?)

父ちゃん、何? 恐い話はやめて。。。

 

恵の大学時代の友人に九州出身の男がいた。長期休みの間以外はほとんど毎日一緒にいて、もう「同居している」といっても良いぐらい、恵は頻繁に彼の下宿に行って、泊りもしていた。

仮に彼をAと呼ぶことにする。

Aの地元の友人にBという男がいた。B君は東京か千葉か忘れたが、確か関東の大学に通っていてAと同じく下宿暮らしだったのだが、夏休みなどの長期休みに入ると、九州に帰る時、毎回のようにAのところに来て一緒に帰っていた。

2人ともバイクで実家に帰るため、B君はAの下宿をちょうど中継地点のように使っていたわけだが、彼が来るのは決まって帰省日の数日前だった。大学が休みに入る日の違いだったのかどうだったか忘れたが、だいたいはAが帰ろうと思う日より前に来て寝泊まりするので、恵もよく彼とは話したりしていたのだ。

そのB君が幽霊を頻繁に見ていた。Aはとんでもなく怖がりで、そういう話をしていると終いには笑った表情のまま涙をこぼし始めるので、多くはAが寝てしまってからそういう話をしていたと記憶している。Aは夜にも弱く、遅くまで起きていられなかったので。

 

 

B君がよく見たパターンは寝ていて夜中に起きた時だそうだった。おばあさんや少女が多く、時々寝苦しくて起きると「異形のもの」が身体の上に乗っている場合もあるらしい。獣とも人間とも違う、見たこともないような生き物(死に物?)だということだった。

恵の分析でしかないが、B君は嘘をつくようなタイプには見えなかった。AB型だからか非常にシビアな物言いの子で虚言症タイプでもない。虚言症に関してはまたいずれ書きたいと思うが、恵の昔の知人に2人、結構すごい虚言症の人間がいたので違いは分かる。

後は「寝ていて夜中に起きた時」というシチュエーションが多いことから、「夢を見ていた」「寝ぼけていた」という可能性は否定できないが、本人は「しっかり起きていた」と言う。

まあ、いずれにせよ、普通の人は夜中に起きても幽霊は見ないので、そこはあまり追求しなかった。何より、彼の話は恵には非常にリアルに感じられたのだ。

で、彼と頻繁にそういう話をしていると、恵も金縛りに遭い、ラップ音を聞くようになり、そのうち「見えてしまう」ようになった。いや、と言っても、恵のは本当にそうかどうかは分からない。寝ていて起きた時などではなく、外で「それらしきもの」を何度か見ただけだ。




B君の「寝起きタイプ」に合わせてたとえると「こんな所にいるはずはタイプ」である。「こんなところに人がいるはずはない」と思うところで人を見て、そしてその人物は必ず消えるのだ。

夜中が多かったのだが、いくつか紹介すると、誰も歩いていないような真夜中に夜型・夜遊び型の恵が帰宅する時、家の近くで女性らしき人が1人で歩いているのを見かけた。そのまま暗い道を建物の陰に消えて行く。

はじめ恵は「こんな夜中に女の人が何で? 不用心やな」と思ったが、「もしかして」と思い直し、反対側から出てくるのをしばらく待ってみた。そこは他に横道がなく、必ず見ているところに出てくるはずだったからだ。

が、出て来ない。で、その通りまで走って行って建物裏を回ってみた。誰もいない。

その建物・民家に入った可能性はある。が、そこは恵の家から数十メートルの距離しかないお宅で、確か、若い女の人は住んでいなかったと思う。来客の来る時間でもないし、また、しばらく見ていたが明かりも付かないのは変である。

この話はこれだけである。後は確かめようがないので。

同じようなものに、愛岐道路でのことがある。



愛岐道路は大阪から向かうと愛知県から岐阜県に抜ける道路で、結婚前、当時嫁が岐阜に住んでいたので、だいたい月2回ほど会いに行っていて、よく通った道路だった。

嫁が独り暮らしを始めるまでの間は、日曜の早朝から夕方まで一緒にいるという感じだったので、恵は土曜日の夜中の間に移動して、岐阜県の原っぱや駐車場に停めた車の中で寝て朝を待つという形を取っていた。そのため、愛岐道路を通る時はだいたいいつも夜中だったのだ。

愛岐道路は結構山道に近い道路で、時々はイタチなどの動物にも出くわしたが、ごくまれに「人間のようなもの」とも出遭った。

道路の片側が山の斜面で、反対側にはガードレールがあって崖状になっており、下は川という場所で、その山の斜面から急に人が下りてきて道路を横切り、そのままガードレールを越えて崖に降りていくのを見たことがあった。

「夜釣り」という可能性はある。または何か違う理由かもしれない。が、夜釣りってそんな夜中にやるの? 確か夜中の2時ぐらいだったと思うが。朝釣りにしても早すぎる。

また、何か他の理由だとしても、なぜ反対側の山の斜面から下りて来た? そこには何もないようだったのだが。また、ガードレールを越えてどこへ行ったの? 本当に崖のようになっていて、下りられる道などないように見えたが。川自体はかなり下にあるのだし。。。

とにかく、ルートの意味が分からなかった。何かの点検作業中だとしたら、ヘルメットもしておらず、懐中電灯も使っていなかったことが不思議である。いや、作業でなくて釣りだとしても、街灯の少ないほぼ真っ暗な場所なので変である。車にはヘッドライトがあるので、恵には見えるわけだが。

この話もこれだけである。

だが、まだ明るい時間帯に結構変なものを見たこともある。

 

 

これは地元・大阪で、川に渡した橋の上を車で通っている時のことだった。そこは幹線道路の一部で左右二車線ある道路だったが、恵が南から橋を渡ろうとしている時、北側から白いワンピースを着た髪の長い綺麗な女の人が微笑みながら歩いてきた。年は20代後半ぐらいか。恵からすると非常に魅力的に見えた。

それ自体は別におかしくもないのだが、彼女が歩いている場所がおかしかった。中央分離帯の辺りだったのだ。左右の端には歩道がある道路だったのだが、その女性は中央線を表す地面に埋め込まれた電灯のところをゆっくりと微笑みながら歩いてくるのだ。

「ええっ、、、何で?」

驚いて恵はしばらく彼女の様子を伺っていた。が、ずっとは無理である。運転しているので。が、しっかりと「人間」が歩いているのは確認できた。見間違いではない。

恵はすぐ「精神病に侵された人が病院から逃げて来たのか」と思った。彼女が向かっている方角には精神病院があったから。が、と言っても歩いて行けるような距離ではなく、逃げて来たなら方向が反対である。

「戻ろうとしているのか?」

それにしても、往復でえらい(すごい)距離である。そこで、恵はまた閃いた。

「これで、振り返っておらんかったら(いなかったら)、見てはアカンものやな」と思って、まずバックミラーを見た。いない。そして、ちょっと無理をして一瞬振り返ってもみた。が、やはり誰もいなかった。

「車に長く乗っていると、ぼーっとしてきて半覚醒のような状態に陥りやすく、それで幻覚を見た」という風に思う人もいるだろう。確かに否定はできない。が、恵自身はそんな状態になっていなかったのは分かっているし、第一、そこはAの家を出て10分も経っていない場所だったのだ。そんなすぐに半覚醒になるほど眠くもなかったし、もし仮になっていたとしても、非常に驚いていた時点で目が覚めるだろう。

「だから目が覚めて、振り返った時いなかったのだ」と言われるかもしれない。が、それも違う。恵は驚いてしばらくは彼女を見送っていたからだ。そして、少し先ほどのことを考えてから振り返るといなかったのだ。と言っても、時間にしてほんの数秒間である。

だから、彼女が橋の上で知人の車に乗ったか、ヒッチハイクの車を捕まえたか、病院の車に連れ込まれたかでもしていなければ、「消えた」ということになる。

これが恵が見た一番「変」なものであるが、その後しばらくしてから恵は一切こういうものを見なくなった。理由は「まずい」と思うことがあって、意識から消したからである。

 

 

AやB君、それともう一人同じ大学の友人と一緒にバイクで山に走りに行った時のことである。実は恵はその頃、車とバイクの両方を持っていた。

峠で休憩し、もう1人の友人がカメラを持ってきていたので、それぞれ2枚ずつぐらいそこで撮ったのだが、後で現像してみると、恵の写真にだけ白い靄のようなものが映っていた。しかも2枚とも。

その話を恵が母親にすると、信心深い(?)母は、その写真を持ってその筋の能力があるとされるお坊さんの所に行った。

「地縛霊やな」と、一言言って、その坊さんは護摩木と一緒にそれを燃やしたそうだ。靄のようなものは、いわゆるエクトプラズムと呼ばれるものらしかった。

その同じ坊さんから、「ちょっと車に気を付けた方が良い」と言われたことがあった。「この子は護られてるので、事故、っていうほどにまではならんと思うが、少しヒヤッとすることがあると思う」と言われた。それに地縛霊がかかわっているかどうかは知らない。

で、その後すぐにそういうことがあった。信号待ちしていて、後ろから追突されたのだ。ちょうど母親の用事で運転手をしていた時で、助手席には母が乗っていた。これが自分から追突したり、急ブレーキを踏んだために起こったことなら「思い込みによるもの」とも推測できるが、普通に信号待ちをしていて突っ込まれたのだ。

相手はお嬢さんっぽい若い女の子で、赤いベンツに乗っていた。うっかりミスのようだった。こっちはドンという音と振動を感じたが、向こうはベンツだからかほとんど何も感じなかったようだった。恵が出て行ってバンパーを見ていると向こうも降りてきたのだが、第一声が「当たりましたか?」だった。

結局、こちらにも被害はなかったのでそのまま帰したが、ちょうど坊さんが言った程度だったことが逆に気持ち悪かった。




B君の幽霊の話を聞いてから、こういうことが連続して起こったため、恵は少し考え、「信じたから見るようになった。心霊が具現化した」という推論に達した。彼の話を聞いて、それを「現実」だと受け入れるまでは、そういう現象の経験がなかったからだ。

だから、そういうものに対する興味を一切消すことにしたのだ。元々人間の付き合いでさえ苦手でうっとおしく感じている恵である。なぜ、それに加えて死者とまで付き合わなければならないのだ、と思うことにした。

そうしてからは一度も「変」な出来事は起きていない。それらしき「人」を見たこともなければラップ音さえ聞かなくなったし、金縛りもなくなった。




話が前後するが、B君が自分の大学の友人を連れてきたことがあった。仮にその子をC君とする。その子も交えて例の如く夜通し話したのだが、聞くと、そのC君も幽霊を見るという。少し気になったのは、C君はその時既に不安神経症のような表情と挙動になっていたことである。

それから1年ほど経った頃だったろうか、B君がC君を連れて来なくなったので理由を訊くと、「あいつ、狂った」と答えた。よくは分からなかったが、どうも幽霊を見続けて気がふれてしまったようだと言う。

その数年後、同じように、Aのところに顔を出さなくなったB君のことをAに訊くと、「あいつ、狂った」と答えたのだ。やはり理由は不明だが、幽霊を見続けていたことが関係しているのかもしれないとのことだった。

恵にとっては友人の友人と、友人の友人の友人なので、申し訳ないが、その後のことはよくは分からない。大学を卒業してからAとさえ滅多に会わなくなったので。

「友達の友達の話は信用できない。ほとんどデマ」というのが一般的だが、この話がそういう類のものではないことはもうお分かりだと思う。そう言われる理由は「それが誰の話か分からないし、直接本人から聞いたことではないから」だ。が、B君ともC君とも恵は直接話していて、この例で言うと彼らは恵の友人扱いとなり「恵の友達の話」である。

ただ、連絡先も何も知らず、その後のことはよく分からないのである。

それはとりあえず置いといて。

ここで問題なのが、「幽霊を見ると、憑りつかれて狂ってしまうのか、頭がおかしくなってきているから幽霊を見るのか」ということである。

先の坊さんのような人なら前者だと言うだろう。が、医者など医学系の人なら、まず後者だというと思う。

実際にはどっちなの?

恵も、それらしきものを見たことがあるが、後に見なくなっているし狂ってもいない。これに関して、医学・科学系の人は何というのだろうか。

B君の話を信じて、ある種の「洗脳」のような形で「一時的に頭が変になっていた」から見ただけで、「やめる」と決めた時に洗脳が解けて正常に戻った、と言うのだろうか。

本当のところはよく分からない。




ただ、1つ気になったのは、恵が見た幽霊らしきものは全て「人間のようだった」ということである。怪談話のように半透明でもなければ普通に足もあった。普通にそこに人がいるように見えたのだ。見た場所やその行動、後で消えることから「幽霊ではないか」と思っただけだ。その辺についてはB君に訊いていなかった。

だが、後日、他の人たちに訊く機会があった。すると、見たことがあるという人は皆、「普通の姿」だったと言う。

まず、1人目は後輩。恵が大学四年の時の一年生だったが、公園かどこかの公衆トイレでのこと。後輩がトイレに入ると鏡の前で髪を梳かしている女の人がいた。気にせず用を済ませ、出て来ると、その女の人はまだ櫛で長い髪を梳かしている。

後輩がその隣で手を洗う。いつもの癖で前の鏡を見ようと思ったが割れていたため、無意識に隣の鏡を覗き込んだ。そして、トイレを出ようと思った時、気付いた。自分の顔は映ったが、その髪の長い女の人の姿は鏡に映ってはいなかったということを。だが、振り返ってもその女の人は見える。恐ろしくなり、後輩は急いでトイレを出たそうだ。

恵は角度の問題などを検証したが、どうやっても通常は映るはずだということが分かっただけだった。また、彼女もごく普通の真面目な子で嘘をつくタイプでも虚言症タイプでもない。

彼女がそれらしきものを見たのはその1度だけだったようだが、恵はそのすぐ後に卒業してそれ以来会っていないので、その後のことは知らない。

他にもインドで出会った当時28歳の女の人は、子どもの頃に幽霊をよく見ていたと言った。だが、初めは幽霊だとは気付かなかったのだという。他の生きている人に交じって同じようにいるだけだからだ。ただ、たとえばその少年と会話していると母親などに「何独り言、言ってるの?」と言われて気付くようになったらしい。彼女はその後、大きくなるにつれて次第に見なくなっていった。

後、10代の寺の娘も同じことを言っていた。「ただ普通の人間と同じように見える」と。

また、歌手のガクトさんも、以前テレビで同じようなことを言っていたと記憶している。やはり、他の人に交じって普通にいるらしい。が、他の人には見えないという。




最後に、これは余談になるが、先の坊さんが言った恵が「護られている」ということは、恵自身何度も経験しているので分かる。また、そのうち書くと思うので、ここでは触りだけ。

2度しか経験のない泊りがけのバイクツーリングで2度とも事故に遭い、2度とも恵が先頭から最後尾に交替した直後に事故に遭遇している。1度目は3人のうち先頭の者だけが相手の飛び出しによる接触事故を起こし、2度目は4人中恵を除く3人が入院した。これも相手の居眠り運転が原因で、いずれもこちらに過失はない。

これ以外にも、もっと信じられない「死んで当たり前」を無傷で済んだことも何度かある。一度は車で一般道を100km以上で走っていてコントロール不能になった時。もう一度は崖から転落して、もう少しで大きな岩の上に叩きつけられそうになった時。どっちも恵自身はなぜ助かったのか、いまだに分からない。どう考えても、自分の力とは思えない。

また、もっと自力とは思えないこともあった。

夜の名阪国道・大阪方面行き。前も後ろも車が詰まっている状態で、しかも100km近くで流れている時、下りカーブに差し掛かる寸前で寝落ちしてしまって、驚いて目を覚ますとカーブを通り過ぎていたことがあった。

これなどは「意識は失っていたが、身体は反応していた」としか説明が付かない。ハンドルはおろか、アクセルやブレーキのコントロールが変わっただけで事故る可能性が高いシチュエーションだったので。

とにかく、今ここで恵が言いたいことは「この子は護られているので」という坊さんの言葉の信ぴょう性である。

そして、その坊さんの能力が本物だということになれば、恵の写真に写った靄はエクトプラズムということになり、、、って、アカン。興味を持ったり、それを現実だと思ったら具現化するんだった。

忘れよう。

皆さんも、このことは忘れてくださいね。その方が身のためですよ。

元々恵は今回、「幽霊は見えるようになっても利点はなく欠点は多いし、興味を持つほど関わる可能性は高くなる」ということを伝えたかったのだ。

「触らぬ神に祟りなし」ならぬ「触らぬ霊に祟りなし」である。

そういう役割の人を除いて、一般人は生きている人とだけ関わっていれば良く、興味本位で近付くべきものではないような気がする。経験的に。

 

 

 

護られているとしか思えない不思議な出来事

 

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